Nov 11, 2014

石油有機起源説の難点

石油天然ガスの起源 ~無機成因説は成り立つか~
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/641/200511_063a.pdf
は、石油の有機起源説派の論文である。

実は有機起源説でも無機起源説でもどちらでもいいのだ。
肝心なことは、4項目


  1. 石油は有機起源説ではありえない深いところから見つかっているという事実
  2. 一度枯れた油田も十年単位で放置するとまた回復するという事実
  3. より深いところにある石油をどうやって確率良く発見するか
  4. より深いところにある石油をどうやって安価に掘り出すか


であり、解決先として2項目


  1. 確率向上には、大深度水平堀(ベトナムですでに実施済み)
  2. 掘るのではなく発想を転換して海底人工トラップを作り集める(メタンハイドレートの採掘の新案)


である。もちろん、「石油」を天然ガスや石炭に置き換えて構わない。

また、昨今のシェールガス、シェールオイルの鉱区では、地上に湧き出る地下水つまり井戸水に天然ガスが含まれてしまい、火がつくそうだ。当然だトラップと呼ばれる地層がないところの地下で炭化水素を豊富に含む根源岩を砕き加熱して石油やガスを採掘すれば、漏れた石油とガスは地下水と入れ替わりあるいは溶けこんで地上に出てくるのだ。それなら、シェールガス田の地上をシートで覆ってしまえば、そのままガスタンクや石油タンクになるだろう

それでは、この論文(以下引用部は > 記号 と緑色)を、有機起源説と無機起源説の両方から中立な立場、あるいは、無機起源説の立場から見なおしてみよう。

>1. はじめに
> ...
> (地下の)CH4は途中で酸化されてほとんどがCO2に(変化して大気に出る)

「ほとんど」という表現が科学的に曖昧である、本当なのか確認したのだろうか。

> 大気中のCO2の一部は植物の光合成により有機物となり、一部は水に溶け、やがて炭酸塩を形成して地下に戻ります。

有機起源説と無機起源説の両方から中立な立場からは、数量的表現が曖昧であること、有機物の一部が燃焼済みの無機物(炭酸塩=炭酸カルシウム=石灰石)として地下に戻ることを表す必要がある。
だから科学的良心により誠実に書くならば「水に溶けた一部の有機物のさらに一部が燃焼済の炭酸塩(炭酸カルシウム)となり石灰石として地下に戻る。」となる。

> また、スウェーデンの隕石孔シルヤン・リングでは、Gold説に基づいて1986年~1992年に2坑井が掘削されましたが、商業量の油・ガスは発見されませんでした。

有機起源説と無機起源説の両方から中立な立場からは、もう少し詳しい事実を書いてもらいたい。例えば「また、スウェーデンの隕石孔シルヤン・リングでは、Gold説に基づいて1986年~1992年に2坑井が掘削され、商業量の油・ガスは発見されませんでしたが、炭素、有機物の堆積が一切ない花崗岩の奥深く地下6000mで少量だが石油とバクテリアが発見された。地上から石油とバクテリアがこの深さ染み込んだと推測するか、これをさらに深層からの有機物による無機起源の証拠と捉えるか議論が別れる」となる。

> 石油開発に携わっているほとんどの探鉱技術者は、非生物起源炭化水素の存在は認めていますが、その量は非常にわずかであり、油・ガス田の成立には貢献していないと考えています。

著者は、「無機起源の石油もあるが量はとても少ない」という曖昧な表現で無機起源を若干認めつつも、彼自身は、日本の学会の旧主派の有機起源説グルーブに属していると予想できる。



> 2. 非生物起源炭化水素
> ...
> 地球上の生物は、12Cを13Cより速く取り込むので、生物起源の炭素化合物は、非生物起源の炭化水素より軽くなります。

有機起源説と無機起源説の両方から中立な立場とより厳密な科学的態度からは、「地球上の生物は、軽い12Cを思い13Cより速く取り込むので、地上の生物に含まれる炭素化合物は、非生物に含まれる炭化水素より軽くなります。」だけである。

> 1969年にオーストラリアで落下・採集されたマーチソン(Murchison)炭素質隕石

唯一の地球外物質としての隕石の例でこれ一つで宇宙すべてを説明することは無謀である。
そもそも、この隕石が無機起源なのか生物起源なのか判定できる根拠がどこにも無い。この隕石のCO2の δ^13 Cが地球の地表と異なり非常に重い理由の説明がない。まるっきり手がかりがないため理由を付けられるはずもない。

> 反応速度が、分解(ヘキサンの熱分解)においても重合(メタン大気中のスパーク実験)においても、軽い12Cの方が重い13Cよりも速いため、前者は熱分解が進むほど、そして後者は重合が進むほど、それぞれの生成物が軽くなるからです。

上記は、再現実験から解る客観的事実である。しかし、この事実の裏側にある事実も見逃してはならないのだ。それは、「生成物が軽くなれば、残留物は重くなるということ」である。これの意味することを詳しく書けば、一つの閉鎖系において熱分解反応が起きていれば分解された生成物では軽い12Cが優勢で残留物は重い13Cが優勢となる、熱重合反応が起きていれば重合された生成物では軽い12Cが優勢で残留物は軽い12Cが優勢であるということ。実験の前提条件の閉鎖系であることが極めて大切なのである。

有機起源説派の主張が科学的に正しいかどうかの判定基準として、「重くなっているはずの残留物がどこにあるのかを述べているどうか、つまり閉鎖系として評価されているかどうか」が浮かび上がる。重くなっているはずの残留物の説明が抜けた有機起源説は片手落ちの不格好な理論と言えそうだ。

> カナダ楯状地のKidd Creek鉱山(世界最大級の火山性塊状硫化物鉱床の一つ)
> ...



Kidd Creek鉱山が湧き出る炭素元素を含むガスは、そもそも、「δ13C1は-32.7‰以下であり、有機物の熱分解の範囲に入る」と筆者自身が論述しているように、筆者の理論からは、火山から出たガスにもかかわらず、その炭素は有機物由来の兆候が見て取れる(筆者もそう書いている)。しかし、「δ13C1>δ13C2、δ13C3、δ13C4」という関係をも計測し、これはつまり、重い13Cが高分子炭素ほど減る=軽い12Cが高分子炭素ほど多いということであり、実験室レベルと同等の短期間の化学反応で低分子炭素から高分子炭素に熱重合したのではないかという推測もできるということだ。ここには、「低分子炭素(=メタン)は生物由来ではない」という筆者のあまり根拠を示さない発想があると私は推定している。
この段階で科学的にKidd Creek鉱山が湧き出る炭素元素を含むガスが有機物由来か無機物由来か判断がつかないと思えるのだが、筆者は無機物由来と断言してしまっている。

> 3. 油・ガス田における非生物起源炭化水素
> ....


実験室における短時間の実験では、熱分解にしろ熱重合にしろ、生成物は軽い12Cが多くなり、残留物は重い13Cが多くなるのである。では、地下深くで比較にならない長時間ではどうなると考えるといいのだろう。なぜすべてのエチレンが分解されてメタンにならないのか、あるいはこの逆にならないのか、この疑問に答えていることが科学的にバランスのとれた理論であると思われる。地下における、化学平衡と熱平衡さらに圧力平衡の視点が欲しい。残念ながら筆者の論文だけでは疑問は解決できない。メタンとエチレンの12C,13Cの比率は化学平衡と熱平衡さらに圧力平衡により安定する比率があるがポイントでありこれが油・ガス田の炭素同位体比を決定してしまうのではないだろうか。


> 4. 基盤岩油・ガス田
> 4-1.ベトナム沖クーロン堆積盆地
> ...
> 原油の地化学性状や原油-根源岩対比に基づけば、基盤岩原油は有機物に富んだ湖成泥岩から生成されたものと考えられます。

ここの見解が、有機起源説派と無機起源説派で大きく異なっている。
同じ油田を見て、有機起源説派は有機起源と言い、無機起源説派は無機起源と言う。

ベトナムの油田で、有機起源説派が説明しなければならないそして説明を避けている科学的困難は、海底下にある油田において、海水より軽い石油がなぜ一番深い基板岩から見つかり、途中の根源岩とされるところで発見されないのかということだ。つまりより高い所にある根源岩の油と水がなぜより深い(=低い)しかも硬い基板岩に入り込むかということだ。

また、有機起源説派が説明しなければならないそして説明を避けている科学的困難がまだ二つ在る。、なぜ大量の生物の死骸=炭化水素が腐らず分解されなかったのかということ、仮に腐らなかったにしろ、そもそも軽い炭化水素がどうやって大量に重いその他の岩石の下に入り込み根源岩と称される物になりうるのかということである。

無機起源説では、説明は簡単で、もっともっと深いところから軽い炭化水素(=石油、天然ガス)がじわじわと沸き上がってくる(浮力の原理)から、たまたま、基板岩の窪みに石油が溜まったし、そこからあふれた物がたまたま根源岩と称されるフィルターに捕まり炭化水素の含有量が増えた、あるいは石油も水もガスも通さない粘土質の層が水上置換法の原理で石油やガスを集めた、それらのフィルターを通過した炭化水素は地上に滲み出してガスや液体となっているというものだ。

無機起源説だからといって、地下深く深く深く掘れば何処でも無尽蔵に石油や天然ガスが湧き出るということではないはずだ。石油だけ都合よく出てくる保証もない。出やすい所があるはずたが深すぎてどうやって見つけていいのか今の技術ではまだはっきり判らないということだ。はっきりしていることは、これまでの油田やガス田や石炭層のように地層的に湧き出て上がって来る炭化水素を集積する地層構造(トラップ)があるところを探すことがいいということだ。ベトナムでは、大深度での水平堀で石油層をより高い確率で探り当てている。あるいは、これまでと発想を180度変えて、石油やガスを集積する構造(トラップ)を人工的にどうやって作るかということだろう。

ラドン油田のより解りやすい図解はこちらが好ましい
https://www.japt.org/html/iinkai/seisan/tech_2007/69-76.pdf
興味深い点は、大深度での水平堀で、石油に当たる確率を高めていることだ。


> 4-2.勇払油・ガス田

[用語]:コンデンセート(condensate):訳は凝縮物、ガス田から液体分として採取される原油の一種で、地下では高熱のため気体状で存在しているが、地上で採取する際、凝縮する液体

[用語]:フラクチャー(fracture):訳は割れ目、フラクチャー型貯留岩とは岩石にヒビが入り割れ目が沢山あるということだ。

[用語]:アルカン(alkane):メタン、エタン、プロパン、ブタンなどベンゼンのように環を作らない鎖状に炭素が単結合した飽和炭化水素のこと

[用語]:メチル:メチル基とはCH3-の化学結合の構造


[用語]:2-メチルアルカン類:エタンのことかと推測

> 花崗岩類と礫岩がフラクチャー型貯留岩となっています(図10)。

勇払油・ガス田でも、根源岩の下層にある花崗岩類の割れ目(=フラクチャー)に石油とガスがたまっている。

軽いガスと油がなぜその根源岩より下の層に貯まるのか、その説明が無いことが有機起源説の不備である。

> コンデンセートは、δ13Cが約-26‰と軽いこと、ステランのC29/(C27+C29)比が高いこと、C25以上の n アルカンに加え被子植物に含まれるクチクラが起源の2-メチルアルカン類が豊富に含まれていること(図11)から、陸源有機物から生成されたと推定されます(武富・西田,2002)。

「δ13Cが約-26‰と軽いこと、ステランのC29/(C27+C29)比が高いこと」はすでに化学平衡の条件として成立する可能性の有無を論証して欲しいことは数段落前で説明した。

「2-メチルアルカン類」が、「被子植物に含まれるクチクラ」に含まれることは客観的事実だが、それが、勇払油・ガス田の全てが陸源有機物起源と断定するにはまだ根拠としてまだ弱いのではないかと思える。

>石狩層群夾炭層の石炭や炭質泥岩のステラン組成はコンデンセートと必ずしも
一致していませんが、これは熟成度の違いを反映している可能性があります(図12)。

この説明は、筆者が現実の油田の状況により説明を都合よく切り替えていることを意味する。つまり、筆者の有機起源説には、統一的な簡単な原理がは無く、素朴な発想「動物や植物を大量に集めて油を絞れるから石油もきっとそうだ」からすべての理論が展開されているように感じられるがみなさんはどうだろうか。


勇払油・ガス田のより解りやすい解説はこちら
http://www.japexrc.com/fracture.htm

> 5. まとめ
> ...
>基盤岩油・ガス田の場合のように、予想外のところまで石油が移動し、集積している可能性があります。

「予想外」の事実をこじつけで説明しているのが、有機起源説であると感じられる。有機起源説は幾つかの決定的と私が考えている疑問に答えていないと思われる。


>鉱対象を限定するのではなく、フレキシブルにものごとを考えることが必要だと思います。これまで予想していなかったような発見がこれからも続くと思います。

この論文の筆者は、実に巧妙な表現方法で有機起源説派が不利になることを避けている。それも日本の学会や己の所属組織において、自分が生き残るための方策であるから仕方が無いのだろう。私も、日本のサラリーマン学者の立場は良く分かる。だから、私たちは、そういう著者の弱い立場も汲み取って論文を読み進めなければならないのだ。

こういう書き方から筆者は、学識豊かで、丁寧で、語り口もスマートである。だが、強い自己主張が欠けている。権力志向あるいは権力に弱いサラリーマンの匂いを感じる。こういう書き方を東大話法というのだ。

人間誰もが、それぞれの今の立場に流れ着いた歴史の中に生きているのであり、その人自身にとって自分が気持よく生活することが小さな正義である。サラリーマンにとって事実かどうか断言できない科学的主張と心中するようなことは、彼のライフスタイルとは相容れないものなのだ。そういうスタイルがサラリーマンにとっていい処世術だと私は思う。おそらく学会の風向きが変われば、彼は最も素早く新しい理論に乗り換えるに違いないだろう。

> 安易に無機成因説を鵜呑みにして、石油が無尽蔵にあるかのような幻想をもつことは、今後の地球環境問題を考えても控えられるべきものであると思います。

この点は賛成できる。無機起源説であろうとも、経済性を無視した石油採掘は意味が無い。まして税金を使った油田開発などばかばかしい。税を使った研究(石油公団)は基礎科学までにしなければならない。儲かるなら、あとはすべて民間に任せておけばいいのだ。

無機起源説から脱線してしまうが、すべてを民間に任せるためには、強力な大富豪の存在が前提になる。

アメリカや中国の富豪に対抗出来るだけの大富豪が日本にも多数いないとチャレンジャーになる人を育てることができないからだ。世界を見ている富豪が、孫正義氏、柳井正氏、三木谷浩史氏の三人しかいないのは寂しい。残念なことに日本には、石油・エネルギー関係の富豪がいない。

これから、日本の貧富の格差拡大は経済成長の必要条件となる。ただし、99%の大多数の貧者(私もここに属するが)には、最低限の健康で文化的な生活を、99%の貧者の参加する保険(10年前レベルの医療水準の健康保険、最低額の老齢年金、万が一の生活保護)で保証することが99%の大多数の国民を幸福にするために必要だ。余計なことは一切しない小さく公正な政府が日本人の未来のために必要と確信している。正当な方法でのし上がった大富豪に重税を課すことをよしとする風潮・言説こそが、上から目線であり、とても恥ずべき卑しいことなのだ。