Jul 25, 2013

LENRの理論候補では、電子と陽子がくっついて中性子になる

用語: LENR : Low Energy Nuclear Reactions = 低エネルギー核反応
かつて常温核融合(Cold Fusion)と言われた現象のより正確な表現

---------

Defkalion社のLENR装置 Hyperion の公開デモ実験が、行われネット中継されました。
その記事が、一般向け科学サイト wired.co.uk に載りました。

現時点で、LENRの実用的なエネルギーを発生する装置が、
E-Cat、Hyperionと二つあります。
どちらも、テーブルトップに置けるぐらいの小型の装置です。

E-Catは、1MWの大型プラントなら1億円前後で購入出来ます。

誰でも今すぐ装置を購入できるわけではありませんが、
いずれ家庭用や車載用のエネルギーとして期待は膨らみます。

また、-CatとHyperion以外に、
確実にエネルギーを発生しており再現できるという実験装置が、
ベンチャー企業や先進的なアメリカの大学などから
多数発表されています。

---------

ところで、LENRの理論というものはまだ確立していませんが、
私がいろいろ調べた限りでは、

1. 電子と陽子がくっついて中性子になる
2. 中性子が周囲の原子核に侵入する
3. 侵入された原子核が核種変化し、同時にエネルギーも出る

が有力な案です。

もう少し詳しく見てみます。
---------

1. 電子と陽子がくっついて中性子になる

この反応が、教科書的な物理学では上手く説明出来ません。
つまり、ここが未知の反応です。

例えば、水素原子は、電子と陽子からできています。
水素原子の直径は、0.1nm = 1億分の1cm。
ですから、電子と陽子は、とても近くにあります。

電子と陽子は、マイナスとプラスの電気を帯びているので、
クーロンの法則(電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例)で引き合います。
つまり、近くなればなるほど引き合う力は、2乗で増します。

しかし、通常の状態では、電子と陽子がくっつくことはありません。
これが現実です。

マイナスとプラスなのにくっつけないという不思議な現実の説明は、
「電子と陽子が水素原子の半径より近づこうとすると、反発力が現れる」
というものです。

反発力を持ちだしてしまうという方法なので、騙されたような説明ですね。
しかし、実際にくっつかないのだから、反発力があると考える必要があります。

知識「原子の構造は、中心に原子核があり、その周囲に電子がある」は、
誰でも知っています。

もう少し詳しい人は、
「原子の中での電子の位置は、決められた軌道が何本かあり、
通常は、その軌道上に電子がある、
軌道から外れた位置に電子があるとその電子の位置は、不安定で
近くの軌道のどれかに落ち着く」
と知っています。

水素原子の場合、電子が一個、原子核は陽子が一個なので、
電子の安定軌道も一つしかないようです。
専門的には、K軌道といいます。

この電子の安定軌道より内側の原子核に電子を近づけるには、
反発力に逆らうだけの強い力、
ただの電気で引き合う力よりもずっと強い力が必要です。

ところで、物理学の観測結果では、
「単独の中性子は、約900秒で、電子、陽子、反ニュートリノとエネルギーに崩壊」
します。

原子核には、陽子と中性子が集まっているのですが、
原子核の中性子は、まったく崩壊しいないように見えます。
原子核の中性子はなぜ崩壊しないのかと、疑問に思います、
説明としては、
「原子核の、陽子と中性子は、とても密着しており、
中性子が崩壊してるはずだが、反ニュートリノとエネルギーが
すぐに、近くの陽子に吸収されて中性子になってしまうと
考えられる、しかし直接に観測はされていない、予想されているのである」
というものです。

つまり、物理学は、
「電子と陽子がくっついてしまうと中性子になる」
ことを認めています。

物理学に詳しい人は、
電子と陽子がくっついて中性子になることは、
「電子捕獲」という現象や
「β+崩壊」という現象であると知っています。

電子捕獲:陽子が軌道上の電子を捕獲して中性子に換わり、電子ニュートリノと特性X線を放つ現象。

β+崩壊:陽子が陽電子(ベータ粒子)と電子ニュートリノを放出して中性子になる現象。

で、LENRでの「電子と陽子がくっついて中性子になる」は、
「β+崩壊」より「電子捕獲」に近い反応と予想されます。


電子と陽子がくっついて中性子になるとき、
エネルギーを吸収することになります。

この中性子の生成反応は、燃焼の化学反応との類似でいえば、
燃焼反応のような発熱反応ではなく、
反対の吸熱反応=外部からエネルギーを加える
ということになります。

どのぐらいのエネルギーを吸収するかというと、
物理学の知識では、 0.78 MeV ぐらいです。

この、0.78 MeV は、物理学の知識では、
「捕獲前の原子核と捕獲後の原子核のエネルギー差が1.022MeV以下のとき、
電子捕獲が発生しうるが、β+崩壊は、起きない」にも合致します。

原子核を水素原子核=陽子とすると
「捕獲前の陽子と捕獲後の中性子のエネルギー差が1.022MeV以下(実際に 0.78 MeV)のとき、
電子捕獲が発生しうるが、β+崩壊は、起きない」となります。

「電子捕獲」の反応では、特性X線が放出されます。
これは、原子核のまわりの電子が、低い軌道に落ち込むときに、
差のエネルギーをX線として放出することです。

で、水素原子から電子を剥ぎ取り裸の陽子にするエネルギー
=イオン化エネルギーは、13.6eVです。
ですから、特性X線は、13.6eVのX線です。
13.6eVは、イオン化エネルギーですから、
通常の化学反応の水準のエネルギーです。

ですから、0.78 MeV は、13.6eV の 57,352倍です。

電子と陽子から中性子を作るには、電子と陽子が単純に電気で引き合う力より
ずっと強い力が必要である理由は、この、57,352倍ということです。

この、57,352倍の壁をどのように超えるかということが、
LENR現象を解明する道筋です。

第一のヒントは、
LENR現象で発生する熱は、通常の燃焼化学反応程度の発熱量であることです。
常の燃焼化学反応では、燃料と酸素の原子が、短時間ですべて反応します。
短時間ですべて反応して燃焼熱が出ます。

LENRでの反応熱が燃焼化学反応程度ということは、
同一時間で反応する原子の割合は、
57,352分の一程度だということです。

つまり、LENRは、原子レベルでは、まれにしか発生していません。
ただし反応すると、燃焼化学反応より5万倍程度のエネルギーを
出すのです。

こういうたまにしか起きない現象は、物理学では、
トンネル効果といい、ごくごくあたりまえ常識です。
ただし、たまたま発生する確率というものを、正確に計算したり、
その条件が環境より変わることを計測したりすることが、
まだまだ遅れているようです。

ということで、リアルなLENR装置が出てきている以上、
「電子と陽子がくっついて中性子になる」可能性は、
最も高いのではないかと思います。

ラティスなにがしとか、プラズモンなにがしとか、
色々な案があります。

2. 中性子が周囲の原子核に侵入する

中性子は、電気的に中性なので、
プラスの電気を持つ原子核と電気の力は働きません。
だから原子核に侵入することは、電子や陽子よりずっと簡単です。

電子は、反発力があって、なかなか陽子に近づけなかったのですが、
反発力の数式は、「シュレディンガーの波動方程式」で表されます。
電子は陽子や中性子より軽いので、波動方程式の波長が、長くなります。
それで原子核に近づきにくい = 軌道半径の大きさの位置が安定しているのです。

陽子や中性子は重いので、波長が、短くなります。
だから、原子核というとても狭い範囲にまとまって存在しています。
したがって、中性子は、原子核に侵入しやすいのです。

この現象は、普通の物理学で実際に観測されている現象ですから、
LENRでもそのまま説明に利用できます。

3. 侵入された原子核が核種変化し、同時にエネルギーも出る

中性子に侵入された原子核は、それまでの陽子と中性子のバランスが崩れて
不安定になります。

そこで、中性子を放出すれば、もとの状態に戻ります。
そこで、陽子を放出すれば、原子番号が変わります(核種変換)。

複数個の陽子と中性子を色々な組み合わせで放出するかもしれません。
そのときに、エネルギーも出すことになります。

最初の中性子を作る時は、吸熱反応でしたが、
ここでは、放熱反応になります。

LENR装置のE-CatとHyperionでは、
「放熱反応 > 吸熱反応」と考えられています。
このため、全体として放熱が勝るので、発熱反応となるのです。

色々な元素と中性子の色々な反応が考えられるので、
「放熱反応 < 吸熱反応」となる場合もあり得ます。

また、原子核が変わる反応ですので、
強い放射能の可能性があります。
実用にするためには、反応を計測して
放射能の心配が無いことをよく確かめる必要があります。

--------------------

上記と似たような話は、何度か書いています。

電子補足とトンネル効果は常温核融合でも成り立ちそう
http://majin-z-shinsuke.blogspot.jp/2012/10/blog-post_29.html

などです。

また、色々な調査でわかってきたのですが、
「質量ゼロの電子」というものがあるそうです。
http://www.hsrc.hiroshima-u.ac.jp/dirac.htm
http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Release/20111110113000/

ディラック電子とも言うようですが、
今の私にはまだ、まったく判りません。
いずれ、LENR現象と関係つけて考えてみたいと思います。

No comments:

Post a Comment