Nov 18, 2022

マキャベリ君主論から抜粋

自由主義の一つ、市場原理主義はある種の理想だが、フリードマンの教科書通りの自由主義市場経済を実現することは難しい。理由は、マキャベリが君主論で示唆したように、人間の本能的な行動原理が、勝利を得るために、自由主義で善とされた行動を逸脱、悪を成してしまう場合があるからだ。

マキャベリ君主論から抜粋

君主にふさわしい唯一の技術は、戦争およびその規則や軍事教練(国家の第一の目的は存続であり、そのための政府の第一の役割は国防)。

軍隊は、自国の軍隊、傭兵軍、外国からの援軍、それらの混成軍のいずれかです。傭兵軍と援軍は役に立たず、危険です。

傑出した武功で帝国を得ることはできても、同胞を殺戮し、友人を欺き、信義も慈悲も信仰もなければ、偉人の栄光は得られない

残酷な処刑は、臣民の利益になり身の安全上に必要である場合のみ、一挙に行なわれその後繰り返してはならない

占領より統治が困難。他人を強力にする者は没落する。ミラノを占領したフランス王ルイ12世は、占領地に自分が移住せず、移民団も送らず、より強い勢力(教会)を増大、外国勢力(スペイン)を誘致、味方にするべき弱小勢力(ヴェネツィア)を破壊し、直ぐにイタリアを失った。

議員(貴族)から選ばれる総理(君主)は地方選挙区を支配する議員を支配統制はできない。議員は国の公正さに関心はなく国民を抑圧し地方を優先し選挙に勝ちたいたい。国民から選ばれる大統領(君主)の周りには服従する者ばかりで、国民を抑圧さえしなければ愛され、議員を従えることもできる。

権力を維持したい君主は、平和な時期でも逆境の時期でも市民が常に国家と君主を必要とするような方針(抑圧をしない、恩恵を小出し継続する、外敵を知らしめる)を採るべき

国民の心は変りやすい、だから国民を説得することは簡単だ。しかしその説得を受け入れたままにしておくのは難しい。(継続的な説得が当然だが)もし、国民が信じなくなったときは、力ずくで信じさせる警察力が必要。

分別ある君主(国民)というものはただ現在の厄介事だけでなく将来の厄介事も考慮するものです。将来の厄介事には全精力をつかって準備をすべきです。予見しておけばそれを治療するのはわけないのですが、さし迫るまで待っていると薬がまにあわず病は不治のものとなってしまうのです。

自給自足できない国の君主は、諸国から憎しみを買わないようにし、防備を固め反撃力を持ち、一年分の資源と食糧を備蓄し、国民を抑圧せず安心させ国民から慕われていなければならない。 


徳行を行なうという公約を全面的に守りたいと思うような君主は、邪な者が溢れる世間にあっては、直ちに破滅してしまう。身を守りたいと思う君主は、徳行を急がず悪行のやりかたを知り必要に応じて悪行を使ったりしなければならない。

気前がよいと思われたい君主は、華美に走り金銭で少数に報いるために国民に重税を課して苦しめ最後はけち臭いと非難される。けちの悪徳を恐れない賢明な君主は節約によって国民に負担を掛けずに事業を行い気前よい君主より多数から尊敬される。


君主になる途上であれば、気前がよいと思われることは必要なこと、しかし、君主になったら、平時は節約すべき、軍隊を率いて出兵するときは、兵士たちを従わせるために、戦利品を気前よく分配しなければならない。

君主は、その臣民を統合し忠誠を誓わせているかぎりは、法に基づいて処罰するから冷酷だという非難を気にすべきではない。君主にとって愛されるより恐れられるほうがずっと安全である。ただし、憎しみを避けよ。臣民の財産とその婦女子に手を出してはならない。


君主には信義・法律による人道と狐の奸計と獅子の武力によると獣道の二道が必要。君主はその信義を守ると不利な時またその信義を守る価値がなくなった時に信義を守るべきではない。狐の道の使い方を最もよく知りつくした者が、最小限の獣道で最大限の成果を得る者である。


君主は、移り気で、軽薄で、軟弱で、心は狭く、優柔不断だと思われると、軽蔑される。偉大さや勇気や真剣さや剛毅さが示されるよう努力しなければならない。誰も君主を欺いたり言いくるめたりできないし君主の判断は撤回されないという評判が守られなければならない。

君主は非難を受けるような事柄(刑罰の執行、税の徴収)は他人に手に委せて、自分の手には温情のあるものだけを残しておけばよい

君主は貴族、軍人や役人を尊重しながらも、そのことで民衆から憎しみを買わないようにすべき

君主は、武装した臣民を軍と警察に組織せよ。危険が大きい軍と警察に恩恵を施せば、軍と警察は君主に依存し、不信を抱いていた連中でさえ忠実になる。しかし、軍と警察からさえも武器を取り上げると、臆病で臣民を信頼しない君主に対する憎しみを生み出す。

政治が派閥闘争に明け暮れていると、敵国から見れば最弱の党派を取り込み侵略の足掛かりとすることでできる。普遍の国是を定めその範囲内で政策を選ばなければ国民は困惑してしまう。 


非同盟国が中立を要請し、同盟国が参戦を求むといったことは、常々起こる。そして優柔不断な君主は、目先の危険を避けようとして、中立の道を採り破滅する。君主が同盟を守り、同盟軍が勝てば、同盟相手がどんなに強力でも、恩義にたいして友愛の絆を結べる

君主はまた、才能ある者の後援者であることを示し、あらゆる技芸でその熟達者に栄誉を与えなければなりません。

君主は、その市民が平穏にその職業に専念して財産を殖やせるように、重税を廃し公平な税率を課し、高額納税者には褒美を与えるべきである。

君主は、一年のうち都合のよい時期に、祭りや見世物で人々を楽しませなければなりません。

君主は、同業組合や地区組織や団体を尊重し、ときにはそれらと会して、その会の費用を負担する気前よさの手本であることを示すべきです。

君主は、臣民の特定団体には彼らの商売を許可する威厳と寛大さ示すべきで、そこへ金を配ると君主の威厳が損なわれてしまう。

側近が有能で信頼できるなら、君主は賢明だと思われる。

使用人が内心はともかく君主の利害より自分の利害を追い求めた行動をしていれば、信頼するわけにはいかない。 

君主が、使用人を正直者にしておくには、君主は彼のことを観察し、褒め、裕福にし、彼にたいして親切に振る舞い、彼と名誉と苦労を分かち合わなければなりません。

君主は、使用人が一人で勝手に決めてはいけないことを分からせ、そうして大きな役職を与えてそれ以上の役職を求めないようにし、多くの富を与えてそれ以上の富裕を望まないようにし、多くの仕事を与えて全力を使わせるべきです。

宮廷のおべっか使いから身を守るには、真実を告げることが君主の機嫌を損ねることにならないことを人々に理解さる以外に道はない。

だれもが真実を公衆の面前で君主へ告げてもよいとなれば、君主の尊厳を貶めることになる。

君主は、国内から賢者を選らび、彼らにだけ君主に真実を離す自由を与え、しかも非公開の会議室で君主が諮問した事柄だけで、それ以外は話させないし外部に漏らさないようにすべきです。 

国民が、ばらばらであれ集団であれこの相談役に気兼ねなく話せばそれだけ好ましいということを理解するよう、君主は振舞わなければなりません。

君主は、相談役の賢者の意見だけを聴いて、(費用と効果と副作用と期限を勘案して決定し、)決定したことに専心して、その決定を守り通すべきです。 

時代や状況が変わったのに、その行動方針が変わらないなら、彼は破滅します。

君主は、善から逸脱しなくてすむのなら、逸脱すべきではありません。しかし、強いられたなら、善を逸脱する方法を知っておくことも必要。 

大衆はいつだって、見えていることによって、またもたらされる結果によって判断するもの


歴史に学んだ現実の政治、人間の本能的な行動原理がマキャベリの君主論に書かれている。

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