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Feb 27, 2013

常温核融合のためにサイクロトロンで中性子の作り方の考察


[この記事の目的]

常温核融合に必要な電子を加速するサイクロトロンの半径を求めること

[常温核融合現象の原理の復習]

常温核融合現象の原理(推測)
http://majin-z-shinsuke.blogspot.jp/2012/11/blog-post.html
は、

(1)軽水素を電離して、電離した水素原子核の陽子と電子を衝突させて中性子を発生させよう。
(2)中性子は附近の原子核に吸い込まれ、ベータ崩壊とガンマ崩壊を引き起こし発熱するだろう。
(3)中性子発生は、吸熱反応、ベータ崩壊とガンマ崩壊は発熱反応、合計で発熱反応。

です。

常温核融合が起きる反応式は、D+D反応(重水素原子核の核融合)という古い説から、p+Ni説(水素原子核=陽子とニッケル原子核の核融合)になり、最近は p(陽子)がn(中性子)になってから n+Ni(中性子とニッケル原子核の核融合)となると言う説に変化してきています。であれば中性子を大量に連続供給することが反応を安定的に起こすための必要条件です。


[水素原子の電離]

(1)の課題を考えましょう

水素原子の電離(イオン化エネルギー)は、13.6 eV という小さなエネルギーで可能です。
http://homepage3.nifty.com/rikei-index01/ryousikagaku/keiretu.html

これは放電程度で可能です。
実際に身近にある蛍光灯の放電程度で可能です。

陽子と電子を分離することが、電離です。
水素ガスは電離したことで気体からプラズマとなります。

普通は、陽子と電子は+-の電気を帯びているので引き合い
また水素原子に戻ります。

[電子捕獲による中性子生成]

ここで、陽子と電子を力いっぱいぶつけると水素原子に戻らず
くっついて中性子となります。電子捕獲ベータ・プラス崩壊といいます。
(ベータプラス崩壊とはいわず、電子捕獲というようですので訂正します)

電子捕獲 = 陽子と電子とガンマ線(=エネルギー) から中性子と電子ニュートリノに変化

電子捕獲は、エネルギー吸収反応なので、
力いっぱいぶつける必要があります。

どのくらい必要かといいますと 0.78MeVです。
13.6 eVの57,352倍です。

参考まで電子の静止質量エネルギー E = mc^2 : 0.511 MeV です。

力いっぱいぶつけるためには、
電子や陽子をすごい速さで運動させて
衝突させればいいわけです。

0.78MeVあれば、ほぼ100%中性子になりますが、
そこまでエネルギーが無いときは、
量子力学の主張であるトンネル現象から推測すると、
一定の確率で中性子になります(2013/03/06追加)。

常温核融合としては、化学反応程度の発熱量が欲しいので、
陽子100万個に一個の確率で発生する
しきい値を計算する必要がありますが、
私のいまの知識では計算できません(2013/03/06追加)。

[サイクロトロンとシンクロトロン]

電子や陽子をすごい速さで運動させるには、
他の電気で引っ張るといいのです。
このままだと直線運動になり装置が大きくなるので、
回転運動にします、それには磁場をかけてやればいいのです。
磁場の中では荷電粒子は回転運動をします。

回転運動の加速装置には、サイクロトロンとシンクロトロンが実用化されています。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%A4%A5%AF%A5%ED%A5%C8%A5%ED%A5%F3
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3

サイクロトロンのほうが古く簡単な技術なのですが、
先端物理学に必要な超高エネルギー( GeV をはるかに超える TeV)の加速ができないので
シンクロトロンの方が現代は脚光を浴びます。

シンクロトロンは、名前にシンクロとつくように
加速している荷電粒子にシンクロして装置の磁場さらに電場を制御するため
高度な制御技術が必要であり高価ですし、
大量に連続して電子を加速することに向いていないと推測できます。

[サイクロトロンの半径]

常温核融合に必要な加速エネルギーは 0.78MeV でいいので、
サイクロトロンでいいはずです。

磁場の中で 0.78MeV の運動エネルギーを持つ電子が回転する半径を
推測計算で求めてみます。

古い教科書「ファインマン物理学II 光熱波動」のPage.104 に

p = qBR       ---(9,7)

ω = qvB / p       ---(9,8)

pc (ev) = 3 * 10 ^ 8 (q / qe) BR            ---(9,9)

と出ています。

記号の意味は、
p : 運動量
q : 電荷量
B : 磁場強度
ω : 角速度
v : 粒子速度
c : 光の速度(光速) 数値は 3 * 10 ^ 8 [m/s]
(ev) : 単位が エレクトロンボルトであることを示している
qe : 説明見つからず

ファインマン先生は、親切な人で Page.105に

pc = 10^9 eV (電子の運動エネルギー)
B = 10,000 ガウス (磁場強度)
のとき 
R = 3.3 m (シンクロトロンでの電子の回転半径)

と解説されています。
ここから、推測計算します。

0.78MeV は だいたい 1 MeV としましょう。

1 MeV = 10^6 ev ですから、
ファインマン先生のシンクロトロンに比べて
 10^3 = 1,000 分の1 でいいわけです。

式 (9,9) から pc と R が比例することが解ります。
つまり、 1 MeVでよければ半径は 1,000 分の1 でいいわけです。
つまり、 3.3 / 1000 = 0.0033 [m] = 3.3 [mm] です。

10,000 ガウス あれば、たったの 3.3 [mm]の半径で 1 MeV まで電子を加速できます。

ファインマン先生は、親切な人で Page.104に
鉄の中で普通作れる最強の磁場は 1.5 * 10^4 ガウス
と解説されています。
磁場の単位の変換をしておきます、10,000ガウスは1テスラのことです。
上記のように 10,000 ガウスは、とても強い磁場なので
一桁弱い 1,000 ガウスぐらいとしましょう。
1,000 ガウス = 0.1 テスラ の電磁石は比較的簡単に作れそうです。
根拠はこの記事 http://oshiete.goo.ne.jp/qa/1299516.html

そうすると、式 (9,9) より、 B と R は反比例するので

「1,000 ガウス あれば、 33 [mm]の半径で 1 MeV まで電子をサイクロトロン加速できます。」

つまり小型(33 [mm]の半径)と1,000 ガウスの電磁石で
電子を1 MeV 程度に加速して衝突させることができます。
(これが、新型のHot-Catが大体半径50mmの円筒形をしている理由かもしれません。)

また、サイクロトロンの構造であれば連続的に大量の電子を加速できそうです。

電子をどんどん水素=陽子にぶつけるのでしたら
水素ガスを狙うより、水素吸収させたニッケルナノパウダーが
的が動かないだけ効率がいいのでしょうね。

ニッケルは水素を吸収する金属として有名(ニッケル水素電池とかで)ですから。

また、シンクロトロン輻射(放射とも言う)という現象について
ファインマン先生 が説明されています。解説によると、
この放射光の波長は電子の全エネルギーを奪うものではなく、ごく一部を奪うようです。
ですから、この小型のサイクロトロンの放射光は、
10^9 eV ならX線でしたが、 10^6 ev なら紫外線とか可視光の世界と思われます。
つまり、安全に放射光を遮蔽できるということです。

[結論]

かくして
(1)軽水素を電離して、電離した水素原子核の陽子と電子を衝突させて中性子を発生させよう。
は、比較的容易に実現できる装置かなと思います。

装置に求める水準は、
毎秒に100万個に一個の陽子と電子が中性子になる程度の確率
です、これより多いと発熱量が大き過ぎで装置が溶けてしまいます
(2013/03/06追加)

装置を電解液溶液(液体イオン=プラズマの一種)とするべきか、
気体を電離してプラスマにするべきか、
テクニカルには思案するところだと思います(2013/03/06追加)

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